top of page



アレクセイ・ナワリヌイ著
講談社刊 2024年10月
数々の政治腐敗を暴き、プーチンに戦いを挑み続け、毒殺未遂で死の淵を彷徨いながらも一命を取りとめて再び立ち上がり、不当逮捕と不当裁判を繰り返された末に、2024年2月に北極圏の刑務所で不自然な獄死を遂げたロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ。
本書は、毒殺未遂後にドイツの病院で治療・リハビリを受けていたころから書き始め、ロシア帰国後に逮捕され、2024年2月の獄中死に至るまで丹念に書き綴った原稿や獄中日記をまとめた回顧録である。幼少時の記憶や両親、親戚の思い出、子供のころに目の当たりにしたチェルノブイリ原発事故を取り巻く異様な状況、ロックなど西側の文化に憧れ、拾い集めた薬莢で爆薬作りにのめり込んだ少年時代、おくてながら青春を謳歌した大学時代、弁護士としての日々、社員旅行先のトルコで後に妻となるユリアとの出会い、そして政治に目覚め、腐敗や政権と戦い続けた日々、祖国ロシアに対する愛、裁判所でのやり取り、獄中の様子など、ときにユーモアやウィットも交えながら、ときに情熱的に、何も包み隠すことなく思いのたけを語り尽くしている。
最後まで祖国を憂い、「詐欺師や盗人ども」から祖国を取り戻すために希望を捨てることなく行動を続け、命をなげうったナワリヌイ。この回顧録は、そんな男が3年をかけて綴った祖国ロシアの賛歌であり、その祖国を骨の髄までしゃぶり尽くしてきた巨悪に対する告発状であり、愛する家族と世界のすべての人々に宛てた遺言である。
bottom of page